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犬以下の生活

Author:泥酔者 ( Profile )
金が無くても失う物は何もないが、プライドを無くせば全てを失う

 ■ 2011/02/21 (月) あの人の幻影


数年前、時流に乗り「リストラ」という名の「人斬り」が大量に執行された。

各部門から何人というように規則性に従って一定数が解雇されたようで、明らかに計画的犯行だった。
解雇された人々は、抜群に仕事ができるタイプではなかったかもしれないが、かといって素行が悪かったり図抜けて仕事ができなかったわけではない。いわゆる標準型の人々だった。
ただ一つ共通していたのは、「物言わぬタイプ」だったということだ。
つまり、解雇基準は「斬っても楯突いて文句を言ってこないタイプ」の一点だけだ。

正社員・嘱託の区別なく無差別に斬られた。ある意味では平等だったのか。
そんな中、何の因果か嘱託の私は残留してしまった。
今では、何故あの時に斬ってくれなかったのかと思っている。

そんな斬られていった人々の中に、私と同じ班で働く40代半ばぐらいの中年男性がいた。私と同じ嘱託だが、勤続年数は私より10年以上だったと思う。元々は夜勤専属の勤務だったが、女子も夜勤をやり始めたことから専属の必要性がなくなり、私と同じ交代勤務に回された。

氏は、一言で言えばイジられキャラで、二回りぐらい年下の正社員からもタメ口以下で話しかけられ、冗談交じりとはいえいつもからかわれているような存在だった。
風貌は・・・例えは悪いが、某北の国家の首領様の長男に似た感じで、太ってて頭も薄く、たしかにイジられる要素は外見からして満載だった。

私とは、私が入った頃から同じ行程だったこともあり、比較的親しく話す仲であった。
冗談か本当か分からない話が多く、下ネタや借金の自虐ネタなどもよく話していた。
同じ嘱託ということもあり、お互いの愚痴を冗談交じりに言い合ったりもしていた。

その氏は、前述の大リストラ祭りの数ヶ月前、突如契約打ち切りを告げられ、十数年勤めたその糞会社を静かに去っていった。

風貌と鈍い印象のある動作からして、社員達からは仕事のできない底辺の中年作業者に分類されており、雇ってもらってるだけで有り難く思え的な視線は常にあった。

仕事も一番重労働を担当させられていた。
他の社員達は飯休憩以外の一服休憩を2,30分悠々ととっていたが、氏は全身汗だくになりながら、飯休憩すら削って働いていた。
だが、そんなことを主張するタイプでも立場でもなく、そんな個人の犠牲の上にあぐらをかいていることを知るものは誰もいなかった。

こういった工場は実に嫌な世界だ。
私自身、初めて勤めた仕事も同じ系列の工場であり、ずっとこういった工場内でも人間模様を見てきた。

自分より立場の弱い者、気の弱い者、物言わぬ者などをターゲットに祭り上げ、罵詈雑言の捌け口にしたがる。
相手が弱い人間だと分かると、年上にも平気で横柄な態度をとって威張り散らす。
その小さな小さな世界しか知らない小僧が、先達の者に敬意の欠片も見せず、仕事とはなんぞやを得意顔で説教垂れる。

高卒でそのまま就職し、学校と同じ感覚で働き続けているように思える。
口では高尚なことを垂れているが、おそらく仕事をしている感覚ではないのではなかろうか。
高校を卒業し、工場という名の「学校」に進学して毎日教えられたとおりに機械をいじっていたら、自動的に金が振り込まれていたぐらいの感覚のように思える。

氏の立場を哀れんでいた私も、今ではその氏の仕事をそのまま引き継ぎ、更には正社員の都合に合わせて毎日違う行程をたらい回しにされている。

正社員になった20歳そこらのお姉ちゃんより、おそらく私の給料は少ないだろう。
仕事量はもちろん正社員と同等だ。なにしろ、この会社は平等主義が徹底しているからな・・・。

もういい加減、私も潮時だ。いや、もうとっくの昔に過ぎている。
次は何をするか・・・少なくとも、もう工場は懲り懲りだ。
100人足らずの工場に、次長やら課長やら係長やら毎年のように増えている・・・果ては事務や総務の受付の姉ちゃんにまで主任の肩書き。一体どれだけ管理職を増やすつもりだのだろうか。

まあいいか。もう私には何の関わりもないことだ。

去年末の契約更新時期、課長に呼ばれ、ボーリング大会の不参加を理由にもう契約を打ち切ろうかと思ったと吐き捨てられた。
続けるか辞めるか自分で決めろと迫られた。予期していなかったこともあり、思わず続けると言ってしまった自分を心底後悔している。
携帯をいじぐりながら、人の進退に関わる重要事項を片手間に話す課長。風貌は、さながらインテリヤクザそのものだ。

思い出したくもないことをつい思い出してしまい長くなりました。
今日もまた粗悪焼酎をあおり、酩酊の中に身を沈めるとします。


お名前   コメント

泥酔者 うさぎ氏>年齢や立場、性格で態度を豹変させる輩は何処の職場にでもいるものですね。嫌な世の中です。 (11/02/27 10:31)
泥酔者 あおねこ@氏>機械化によって確かに人はいらなくなり今のような人余りになりました。機械化で便利になることは人間の幸福と必ずしも正比例しませんね。 (11/02/27 10:29)
泥酔者 まつ氏>私と同じような苦悩の日々ですね。酒なしには到底生きていられません。 (11/02/27 10:28)
泥酔者 サイコロ氏>正社員は非正規を確実に格付けして身分を下に置いていますね。現代のカースト制度です。 (11/02/27 10:27)
泥酔者 ポンスター氏>どの業界でも同じような縮図ですね。勝ち組と錯覚している人々は一寸先は闇という言葉を失念しているのでしょう。 (11/02/27 10:25)
泥酔者 お疲れです。氏>頑張る気力を養うことがまず先決ですね。 (11/02/27 10:23)
泥酔者 鈴木氏>弱者でもいい。ただ慎ましく静かに生きて行きたいだけなのに、それすらも許されない世の中になってきたのでしょうか。 (11/02/27 10:23)
うさぎ パートの班長、私が年下でいいやすいのか 50代の人には、何も言わず、今日も納得いかないこと言われたので、言い返したら、社員に呼ばれ、話あいになりました。理不尽、不公平なことがしょっちゅうです。パートリーダー、みんなに嫌われてるし、カイシャが捨てゴマパートとしての扱いの会社なので、あまり気にするのもアホらしいですが!朝からとても不愉快なおもいしました。疲れた (11/02/24 19:16)
あおねこ@ 人はそんな訳にはいかない。簡単に捨てられるものではない。管理者である以上、人の生活を守ると言う義務が分からないのであろうね。 (11/02/22 15:48)
あおねこ@ 管理者は、機械と人との区別がつかなくなっているんだろう。人は機械やロボットではない。機械は壊れて使えなれば、捨てれば良い。 (11/02/22 15:44)
あおねこ@ 人は機械やロボットを管理するだけの仕事になり、非常に楽になりましたね。 (11/02/22 15:38)
あおねこ@ 工場か…昔はすべて手作業で作って過酷な労働だった。それが、機械やロボットが出てきて、24時間働けるようになり効率がよくなった。 (11/02/22 15:36)
まつ 頑張ってくださいなんて軽く言えませんが…俺も工事で若い奴に抜かれ安給料。新しく働く所もなく毎日、酒が楽しみで生きています。なんか悔しいです (11/02/22 05:04)
サイコロ 悔しいですな・・・人並みに扱わないということは・・・自分は20年前のことになりますが、ある一部上場企業の子会社に派遣で入っていました・・・幸い、好景気だったので、苛められることはありませんでしたが、辛い作業や人の嫌がる仕事は、回ってきたと記憶しています (11/02/22 02:16)
ポンスター IT業界も、そんなとこあります。上げ足とったり、気分であたってきたり。そんなのは、上場企業の社員に案外多いです。その中で耐える自分も情けなくなります。 (11/02/21 23:42)
お疲れです。 辛く厳しいですが頑張りましょう! (11/02/21 20:25)
鈴木 正に格差。読んで涙が出ました。そして腹が立って来ました。好きで弱者に墜ちたわけではないのに、頑張っているのに、何故にこうなるのでしょう。酒が染みて来ます。 (11/02/21 20:23)


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