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Transparent lie


 ■ 2009/04/09 (木) ……春を待っている。


アパートまでの帰り道。
桜の花びらが散っているのを見た。

…そういえばアンタは桜が嫌いだったね。

『桜が美しいだなんて誰が決めたんだよ。
「ハラハラと舞い落ちるその姿が潔い」なんていう人もいるけど
 …そうは思えない。どうしても。

 美しく舞い落ちたようにみえる白い花弁は、
 道行く人々の足に踏みにじられて…

 白かったころの面影もないほど薄汚れて…
 それでもなお、土に還ることもなくアスファルトにしがみついて
 …あんな無様な花はないよ』

って苦虫噛み潰したような顔でアンタが言うから

何か言い返したくなって、

『…潔いかどうかは分かんないけど
 どんなに踏みつぶされてもめげずに毎年咲くんだから、
 根性はあるんじゃない?』

って僕は言ってみた。

珍しい僕の反抗に驚いたのかなんなのか、
あんたは少し目を見張ってこっちを見て。

僕が振り返ると、すぐに目をそらして窓のほうに顔をそむけた。
でも赤い耳と窓に映った憮然としたアンタの顔は確認できたよ。

今思うと、アレ
ああ言えばこう言う理屈屋のアンタに、僕が唯一勝った瞬間だったね。




……あの冬の日から、僕に春は来ない。
アンタが僕の目の前からいなくなった日から、もう何年経ったんだろう。

この世界は、何ら変わりなく進んでいるけど
僕の人生の歯車だけが空回りし続けている。

何も見ても、何に触れても
思い出すのはアンタいたその頃のことばかりで

…自分のことながら馬鹿みたいだ。
過ぎた時間は帰ってこない。そんなこと僕が一番分かっている。


わかっているけど、願わずにはいられない。
僕は、やっぱり馬鹿なんだろうね。


お名前   コメント

風来坊 そっか。。 (09/04/12 20:44)
栄人 …まぁ、嘘なんですけどね(笑) (09/04/12 00:06)
風来坊 桜に根性か・・・発見だ。はらりと舞う花びらに儚さを見、踏みつけられる花びらが哀しかった。踏まない様に避ける事すら、できない事にも。   自分も同じく、、、っすw (09/04/10 22:13)


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