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Transparent lie


 ■ 2008/02/21 (木) ALONE


<ALONE>

僕はただ、呆然と見つめていた。
いや見つめることしかでしなかった。

つけっぱなしのテレビと
フローリングの上、無造作に転がるバタフライナイフ。
白いソファーには、僕の彼女が横たわっている
彼女の服は・・・・・・・・・・・・血で染まっていた。

つきあって3年。2つ年下の彼女は気分屋で飽き症なところもあったけれど
可愛らしく、優しく、そして何より人をひきつけるような笑顔をもつ人だった。
僕は彼女の笑顔がすきだった。
自分にはもったいないと思っていた。

その彼女が今、僕の部屋で血に染まり横たわっている。
床にはナイフ。僕のものだ。

こみ上げる恐怖、叫びたい衝動。
恐慌状態になりそうな自分を、なけなしの理性で必死でつなぎとめる。

考えろ。考えるんだ。
コレは一体どういうことだ?何故こんなことに?

部屋を見回す。確かに僕の部屋だ。そして僕と彼女以外誰もいない。
そもそもこの狭い2DKに隠れる場所なんてない。

頭が痛い。思い出せない。
昨日の夜、僕は一体・・・

窓から差し込む夕日が部屋中を鮮やかな茜色に変わっていく。
その時マンションのドアが開く音がした。          <第一話>

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「バタン」
ドアが重々しい音を立てて閉まる。
玄関には、見知らぬ男が立っていた。
インターフォンすら押さず入ってきたその男は、背格好からみて20代後半。
明るい色の髪。黒いスーツに黒いシャツ。
どうみても堅気には見えない。

奴はあわてて駆けつけた僕を無視し、靴も脱がず廊下にあがった。
そのままいくとリビングだ。リビングの奥にはソファーがある。
ソファーの上には・・・・

「ちょっ・・・!!待てよ!!」

奴はリビングの手前でとまり、もうひとつの部屋のドアを開けた。

僕は息を呑んだ。
もうひとつの部屋に、 死体があったからだ。            <第二話>

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一目で死体だとわかった。
うつ伏せで転がっていた男の周りにはおびただしい量の血が広がっていた。

思わず僕は叫んだ!!
「僕じゃない!!僕は誰も殺してない!!」

奴は叫ぶ僕をちらりとも見ずに 驚くでも騒ぐでもなく、じっとその死体を見ていた。
そして死体の横で膝をつき、まるで同情でもしているような表情で手を合わせた。

勝手に人の家に入り、死体を見ても驚かない。。。
この男はこの家で人が殺されることを知っていたのか?ということは犯人は奴なのか?
・・・いや、おかしい。それなら何故そんな眼でこの男を見つめるんだ。
妙な違和感に胸が騒ぐ。頭の中でどこかがおかしいと警鐘がなっている。

奴は立ち上がりリビングに向かう。
僕はその後を追った。                     <第三話>

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
奴は転がったナイフを踏みつけて
リビングの奥のソファーに向かう。

ソファーの上には彼女がさっきと同じ姿で横たわっていた。
奴は彼女の名前を呼ぶ。

彼女がゆっくり眼を開いた。
そしてすっくと立ち上がる。まるで童話の白雪姫のようだった。

目覚めた彼女に奴はこういった
「もう、いい加減こういうことするな。人の命をなんだと思ってるんだ。」

彼女は笑った。
「だって、もう飽きちゃったんだもん。」
今までみたどんな笑顔よりも 鮮やかな笑顔だった。
彼女は死んでいなかった。
彼女の服を染めていたのはあの死体の返り血だった。
二人は部屋を出て行った。



・・・・・・・部屋に一人残されたのは、僕と彼女に殺された僕の死体だけだ。

                                   <終>

昨日の某番組に触発されて小話書いてみたけど
涙が出るほどベタだな。オイ。
まぁ、書いた本人が書き終えて読み直してアローンな気持ちになった事は確かだ。
てかそもそもB'z の「ALONE」ってそういう曲じゃなくね?って言い訳をしつつ
あと動機とか方法とか部屋の間取りとかよく考えると
「ちょ!・・・待てよ!!」って自分でもいいたくなるけどあえてそこもスルー。

最後に一言言わせてもらうなら
・・・「ちょ!!・・・待てよ!!」は木村拓也風に読んでください。




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