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U_sanのいいんですよ。それで。


 ■ 2014/03/13 (木) ハンバーグに想う


母はおひとり様、たまに会いにいってるけど
ほとんどの時間はおひとり様。
きのうの受話器の向こうからの声は
いつになく暗い。
どうしようか?
そう思案にくれながら今日をむかえた。
「夕方会いに行く」と電話。
「夕食はなにがいい?」
「カキフライ。」
そういって電話を終えたがふと不安になった。
昔あたったことがあったこと。ただでさえ胃腸が弱いのに。
職場に迷惑かけたらどうしよう。
電話しなおしてハンバーグに変更。

母のハンバーグは独特だ。ちょっと他では食べられない。
妙にしょっぱく、そして固い。表面は黒焦げでたまに中が
半生なこともある。肉汁はほとんど逃げてしまってバサバサ
しているが、けっこう美味い(^^)
小さいころからそれがハンバーグだと信じて疑わなかった。
美味しいといつも思っていた。
たまにレストランでハンバーグを食べてもなにか物足りなかった。
何故だろう?
母は料理が上手というわけではけっしてなかった。

父が定年してからハンバーグは父が作るようになった。
男の料理というものは、基本材料に、いとめをつけない。
贅沢の大盤振る舞いだ!
レシピ通りにつくられるハンバーグ。
たしかに美味いが、なにかがちがう。
我が家の味はどこいった?

実家に着いた。
母はテキパキと夕食の準備をすすめていた。
テーブルの上にまだ火を通していないハンバーグが置かれていた。
「ああ、変わったのだ。」
少し残念に思った。
昔の小ぶりでゴツゴツしたそれでなく、大ぶりでなめらかな
表面のそれはレシピの影響をうけたにちがいない。
そう感じた。

しかしながら黙々と料理をすすめる母の後ろ姿はどこか神々しい。
邪念が消えている。
母は幸せそうだ。

ハンバーグを一口食べた。
おいしかった。
昔のハンバーグも食べたかったけど
母の台所での後ろ姿を見れただけで満足だった。
新しい職場でのはなしをしながら食べた。

風呂から上がって、母はハンバーグが美味しかったかどうか
きいてきた。
実に20年ぶりらしかった。
「美味しかったよ。」
そう伝えたが母は不満足だった。
「美味しかったよ。小さいころより格段に美味しくなってる。
でも食べたかったのは小さいころ食べたハンバーグだよ。お母
さんのハンバーグはしょっぱくて固くて表面が黒焦げだったけ
ど、それが食べたかったんだよ。でもね、お母さんがお父さん
のためにと料理をがんばっていたのは知ってるから。お父さん
は小さいころの貧しさの反発から贅沢好みだったからそれに合わ
せていったのはわかってる。お母さん、いつの間にか料理上手
になってんだよね。」
姉にも同じことをいわれたのだという。昔のハンバーグを食べ
たいと。
もうつくることはできないのかな。
すこし残念だけど。

私はようやく再就職した。それは母とて望んでいることだった。
しかし、それと同時に不安もあった。
もう会いに来てくれないかも知れない。
それがきのうの声の暗さの理由。
今日、私が会いに行くといったのは母にとっては予想外の
こと。
驚かせるつもりはなかった。
ただ、気になっただけ。

母のハンバーグには多くの想いが込められていた。
私を忘れないでほしい、いつも一緒だと思ってほしい。
美味しいとおもってほしい、いつでも助けてあげる。
今生の別れかもしれない。
しかし、それでもなお幸せになってほしい。
母は今、自分ができることを、そして私が受け入れやすいことを
誠心誠意を尽くしてやったのだろう。

私が小さいころのハンバーグが食べたかったといったことが
母はとても嬉しかったようだ。
でももうそれもいらないかも知れない。
今日のハンバーグのことを真剣に考えなければいけない。
なにができるかはわからないが
今日感じた母の想いはしっかりうけとめなければならない。
そう思った。


お名前   コメント

うーさん 感謝の気持ちを手紙にするといいかも、なんて思ったときもありましたねエ。 (14/03/14 21:16)
うーさん そうですね(^_^;)うちの母は実は優しかったのかもしれません。 (14/03/14 21:03)
ひくいどり 私の母のハンバーグは昔と変わりません。でも、やっぱり母親の料理っておいしいですよね。今は病気で入院して、帰ってきてから、母の具合が悪くて弁当の日も多いんですけど。 (14/03/14 11:15)
光砂今 素晴らしい。優しいお方ですね。 (14/03/14 01:45)


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