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不信のときAuthor:伊藤 博文 ( Profile ) 心に愛がなければ、いかなる言葉も相手の胸に響かない。 〜聖パウロの言葉より〜 |
■ 2014/08/22 (金) 出 勤 |
サラリーマンの無断欠勤や蒸発が激増している。原因の大半は、企業内の複雑な人間関係や、人間性の無視ではなかろうか。 野心に燃え、一流商社に入社した勝田。しかし彼は、次第に個性や夢を抹殺され、今は“人間部分品”にすぎない自分に絶望を感じていた。ある日、出勤途上の彼を突然襲った激しい衝動!忘れていた青春の想いに駆られ、彼は出発まぎわの列車に飛び乗った・・・・・・。
(「夢の虐殺」森村 誠一 昭和48年5月号「小説現代」) 僕は「うつ病」で7月24日から会社をずっと休んでいた 朝起きるとワイドショーを見て、佐世保の女子高生の殺人事件や新潟新発田市の 誘拐殺人やタイの代理出産のニュースを見ていた。 それから近所の巨大なイトーヨーカドーのショッピングモールで 何時間もぼんやりしている。昼間は憂鬱だった。 夜は落ち着いた。9時〜11時のニュースを見て、午前1時に夜の散歩に出かける。 夜の散歩はよかった この時間は街は静かで涼しかった。 心療内科に通い診断書を会社に提出した。 休暇中、何度か会社に行き、自分の病状を「報告」した。 <鉄筋の檻に飼われた豚同士の近親結婚は、もうまっぴらだ> <1日や2日会社を休んだところで、家畜が畜舎から逃げ出して、そのへんをうろうろ さまよい歩いただけにすぎない。野性を失った家畜は、独力で餌を見つけることが できずに、間もなく畜舎へ連れ戻される。> <Cフェースを勝ち取ったら、聡子と結婚しよう> <おれは、最初から聡子と結婚すべきだったのだ。長い廻り道をしたが、ようやく 本来の道を探し当てた> 読み終わった勝田は胸の底から払拭できなかった予感めいた不安が当たった とおもった。 「やっぱり脱出できなかった」 勝田はつぶやいた。そんな気がずっとしていたのだ。 − そうよ。あなたにそんなことができるはずないわよ − 耳朶にゆかりの勝ちほこった声が聞こえてくるようである。 勝田は聡子からの手紙を粉々に破り捨てると立ちあがった。 妻に離婚の意思を取り消すために。そして明日から、鉄筋の檻に飼育される家畜人の 群れの中に戻るために。 鬼面岩Cフェースに代わって、巨大な鉄の檻のような社屋が、瞼に浮かび上がった。 − 今夜は久しぶりに妻を抱こう − 不思議なことに彼はその檻に戻ることに喜びすら覚えていた。 久しく離れていた人工的にほどよく調味された、栄養満点の餌を早く食べたかった。 (「夢の虐殺」森村 誠一) 僕は数日前から会社にまた通いはじめている。 周囲の人間ははじめこそ遠巻きにしていたが 2、3日すると以前と変わりなく接してくるようになった。 面の皮が厚いのが僕の唯一の取り柄、それが「しがみつく」僕の生き方だ。 |
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サイコロ 良いではないですか^お互いしたたかに生きましょうー^ (14/08/22 23:13)
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