爺放談

私は以前、漫画家をめざし上京、しかしその夢破れ私はある複写機のメーカーの販社に就職しそこの営業マンとして働いていた時の事で、その後の人生にも大きく役立っている経験をさせていただきました。

今回はそのエピソードを書いてみようと思います。

まずは複写機のメーカー事情から触れますが、当時の日本での複写機メーカーは「ゼロックス　キャノン　リコー」がビッグ３で、他にはＭＩＴＡ　コニカ　ミノルタ　などがありました。

複写機メーカーの収益のほとんどは機械を売っての収益と普通は考えておられる方々が多いと思いますが実はそうではなくてその実は「保守料金」と言う物で支えられているのです。

この保守料金というものは、複写機一台につき毎月のコピー枚数×設定金額というものです。

この設定金額というものは毎月平均どれほどコピーするかで変わってきます。

大手企業になればなるほど事務所などの規模も大きく、人員もたくさん居るので複写機一台あたりのコピー枚数が半端ではなく、大手企業の複写機一台でその辺の個人商店や小さい会社のへたをすると１００社以上分のコピー枚数に相当します。

ですから大手企業ほどこの設定金額は低く、小さい会社ほど高くなるのです。

ではこの保守料金とはなんでしょうか？

これを設定したのは開発メーカーであるゼロックスが考案したもので、最初の頃機械の紙詰まりや故障が多く、頻繁に修理以来があり、これではせっかく機械を売っても利益が出ないとして考案したものだそうで、要するに機械トラブルが出ても何年でも只で診てくれる保障料なのです。

複写機が世に出て最初の頃はメーカー側も導入側もそれなりのこのシステムの恩恵はあったのですが時代が進むにつれ、機械も日進月歩でそれほど故障もしなくなり今ではメーカー側がこのシステムの恩恵を多く授かっています。

このシステムはその他の複写機メーカーも真似て全て導入しており、現在に至ります。

導入側も馬鹿ではありません、このシステムに異論を発している方も多く居ますが複写機メーカーが全部このシステムを導入していますし、今や複写機無しで業務をすることも出来ません、ですからしぶしぶ受け入れざるを得ないのでしょう。

上の説明でお分かりいただけると思いますが、ですから多くの複写機メーカーはいっぱいコピーしてくれる大企業ほど自社複写機を導入してもらいたいのです。

現在もあまり変わっていないと思いますが日本の複写機メーカーのシェアーは１位がリコーだと思います。

しかし、複写機１台当たりのコピー枚数が大量な大手企業はゼロックスが独占しております。

リコーやキャノンはシェアーは高いのですが実はコピー枚数の少ない中小企業がほとんどで、利益と言うとゼロックスには全くかないません。

しょせん機械を売っても次の買い替え需要なんて相当先になります。

やはり、毎月毎月入ってくる保守料金がどの複写機メーカーも喉から手が出るほど欲しいのです。

ですからゼロックス以外の営業マンは大手企業に導入してもらう為躍起になっています。

大手企業に導入していただけるのであれば、一時の携帯電話のように機械は只で良いのです、置いてくれるだけで良いと言うのはどのメーカーも同じで実はこれが厄介なのです。

今やどのメーカーも機械の性能に差は無く、ではどこで差を付けるかと言えば次に来るのは製品の値段になりますがこれもどのメーカーも只ならもう何処で差を付けるかと言えば保守料金の値段しかないのですが、ここはそう簡単にいじることは出来ないのです。

この部分はどのメーカーもある種生命線の様な物で、ここを泥試合にすると自分の首を絞めることにしかならないのでここはそうは簡単にはいじれないのです。

では複写機の営業マンは何を武器にすればよいのか？

あらゆる職種の営業は居ますが、良くこう言います。

複写機の営業が出来れば何の業種の営業も出来る！と言います。

雨の日に傘を売るのは誰にでも出来る、晴れた日に傘を売るのが営業だ！

確かにそうなのですがこれはまだいつか雨が降るために！と言う営業文句が出てくる余地が有ります。

しかしこの複写機はその事務所に無いなら良いです、また増設と言うのなら余地が見つけやすいのですが当時でも既に複写機の無い事務所など皆無で、しかも大手企業になってくると新しく事務所を増設すること以外複写機は行き届いています。

おまけにその機械の存在理由は最近は複合機などと言ってますが所詮はコピー以外何者でもなく、多少スピードが速くなったぐらいで大昔から他のあらゆる製品に比べ目を見張るほどの進歩は無く、実際何処の事務所でも一番買い換えない物の一つでしょう。

おまけにこの保守料金システムのおかげで壊れても只で修理できるのですから尚更買い換える必要などありません。

ですから複写機メーカーは買い替え需要のほとんど無い物ですから尚更保守料金に依存しているのです。

しかし大手は只で置けるのだからそんなに難しくないのでは？と言う疑問をもたれる方も居るでしょう。

一度でも営業をされたことが有る方なら分かると思いますが、大手になればなるほど新しく口座を開設することを極端に嫌います。

どうしても必要なものならしょうがありませんが現在有るものを変えること、ましてや以前と変えても何も変わらないのならそんな面倒なことはまずしません。

ゆえに複写機メーカーの営業マンはほとんど武器が無いのです。

しかしそんなことを言っても成績を上げなければなりません！

ゼロックス以外のメーカーの営業マンは毎日新規開拓を求められています。

そうなると即決性の早い中小企業に行かざるを得ないのです。

しかも毎日足で飛び込み、少しでも脈がありそうなところで歌い文句としては、利益が出ているのでしたら税金対策としてリース契約を進め、資産にせずおまけに以前よりコピースピードが速くなり必要でしたら複合機にしてこれから来る時代にも対応していける！と言った具合で勧めていきます。

そんな営業マンの中には大手に挑戦していく営業マンも中にはいて、ドンキホーテのように飛び込んで行くのです。

その様な営業マンは上記にも示したように大手には何の武器もありません、しかし彼らはそんなことは承知で飛び込んでゆくのです。

それは営業の本当の王道「自分を売る！」これしかないのです。


すこし前説が長くなりましたので、エピソードは次回の日記に書きます。

以上の事を踏まえて次回を読んで頂くと良く分かり面白いと思います。



ちなみに余談ですが、コピーと言う言葉を使われるようになったのはリコーの戦略でそうなり、昔は、現在も大手で勤めている年配の方々はコピーすることを「ゼロックスして！」と言っていました。