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ヒモと呼ばないで9年ぶりに帰ってきました。誰か助けて。 |
■ 2003/12/05 (金) 採用通知 |
10:45頃に電話が鳴る。
意識のどこかに一昨日のことが残っていたのだろうか、二度寝中にもかかわらず俺は反射的に起きあがり、受話器を取った。 電話の声は遠く、会社名も聞き覚えのないものだったので、今度こそ勧誘かと思えた次の瞬間、その女性の声は妙に早口なまま意外な事を告げた。 「考慮の結果採用が決定しました。それで今後の予定なのですが…」 慌ててメモを取るも、相手の早口と頭の混乱で筆が追いつかず、詳細は追って郵送で知らせると聞いたところで、メモを取ることを諦めてしまった。 主旨は、15日から研修だということだけだったし。 っていうか、マジかよ。 慌てて、この会社の求人記事が載っていたのが折り込み広告だったか、ハローワークの紹介状だったかも思い出せないまま、とってあれば当然あるはずの場所を探すも、見当たらず。 …捨てたんだ。 ドタバタしながらも、とりあえず早く結果を知りたがっていた妻にメールを送る。 ここで一息つくことにし、熱いココアで一服しながら、混乱した頭を整理することにする。 そうだ「結果はともかく」「仕事を探している」という「ループ」を以て「防衛システム」とするんだから、仮に「採用」という結果でも………いいや、それじゃ、よくないんだ。 一度採用されたら、妻はいくら少ないお金でも、俺の収入を当てにするだろう。 そんなことより「働いてる俺」を見て、彼女の考えがより義母に近くなってしまうにちがいない。 そうなると、家で育児と家事だけをするというライフスタイルを決定的に失ってしまう。 義母に逆らえない妻に、俺が納得したことになってしまう。 家事をして、娘の面倒を見る最終的な権限を義母から勝ち取って、それを妻に納得させるのが俺の本望じゃないか。 「男になんか育児を任せられない」「大体、出来るわけない」「男には他にすることがあるはず」なんていう勝手な思い込みには、抗い続けるんじゃなかったのか。 その第一歩が「就職しない/出来ない俺」をしっかり認識させることだったんだろ。 こんなに早く採用されてどうする。 少なくとも今まで面接した会社で採用される予感があった会社なんて一つもなかったから、採用が決まったあとのことを具体的にこれっぽっちも考えてなかった。 特に今回の警備会社なんて、絶対ないはずなのに。 こんなウソをつくのは気が引けるが仕方ない、今回は不採用ということにしておいて、こういうケースの事もちゃんと考えておこう。 …えっ、でも、もう採用決まったってメールしちゃったよ。 何やってんだ、俺は。 なんて事をあたふた考えているうちに、早速妻から返信のメールが届く。 まだ昼休みじゃないだろ。 勤務時間中は連絡出来ないんじゃなかったのか。 文字は「よかったね。」だけだが、その前後に絵文字が四つも付いている。 勤務中だから、こっそり打ったのだろうか。 そう言えば、これは嬉しいときの彼女のメールの癖だ。 言葉は少なく、絵文字は多く…結婚前によくもらったけど、最近はあまりなかったかも。 そんなに嬉しいのか。 「最善を望んでるか?!最悪を想定してるか?!」 小倉智明の朝の番組でスタローンが言ってた言葉を今また思い出した。 俺の考える「最悪」はあくまでも「『主夫』の俺に義母が納得せず、妻がそれに追随してしまう」という範疇を越えることはなかった。 まさかここで採用通知を受けるなんて。 どうしよう。 |
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