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人生???


 ■ 2005/01/01 (土) 要旨(V 最終回)


あけましておめでとうございます。
今回で連載終了。この後のことはいまのところ考えていないんですが、まあぼちぼち。

>4と5さん
しばらく家を離れていたもので、ご返事が遅れました。
ご快癒へ向かわれていると伺えたことは、私にとっても喜ばしいことです。

論文を書くことで得た最大のことは、文章を書くことの喜びを改めて知ったことだったかもしれません。
といって、怠け者の私は、だから作家になろうとおもって目立った努力をするわけではないのですが、しかし、
文章を書くことで生きられるかもしれないという予感だけはあります。

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 だが、ここで一つの疑問を提示することが出来る。
 被投性という概念は、平易に訳せば「投げられてあること」というほどの意味であり、一見、同じく平易には「計画する・下絵を描く」というように訳せる企投の対概念であるかのように考えられる。しかし、この被投性という契機にふくまれる「既に」という契機は、現存在の能動性に対して「既に」であったはずである。つまり、現存在を投げたのは、現存在自身ではない。もし被投性と企投が単に対象的な対であるとしたら、企投によって現存在は自らを投げることが出来るのだから、被投性においても投げるという比喩の主語が現存在と擬することも出来るが、それが正しいとすると「常に既に」現存在に対して世界が開示されているという意味での被投性が理解できない。そして、さらに、そうした受動性が我々の存在に属していることを理解することの可能性もまた危ぶまれることになる。我々の能動性が根源的には受動性の上に成り立っているとしたら、そうした受動性を能動的な了解によって語ることが可能なのかどうかという問題が現れる。事柄として本質的であるのは、この問題である。『存在と時間』のテクストは、現存在の被投的性格について、その根源を現存在に内在するとみるのか、それとも外在的に捉えるのかと言うことに関しては、最終的には曖昧なままである。このことは、上記のように書物としての『存在と時間』の理解を左右するのみならず、我々が自らの根源性を理解すると言うことに関してまつわる困難を示す。基層的文節は、分節を与えるものであるにもかかわらず、言葉によって語られることによって被分節化され、文脈内的な意味を付与されてしまう。 こういうように、根源性にまつわる省察は、その過程上、省察の開始の際に設定された基本的な前提を覆すことなる。世界内部のものについて用いられる言葉によって世界の外部のものを表象した瞬間、それは世界内的なものの文脈の内でその外部を表象していることになってしまい、語りが目指そうとしたものを裏切ってしまうのである。
 裏切りの無い語法を開発することが出来るのだろうか。それとも、むしろ、裏切りであるかのような語法によってこそ、根源的なものが語られるのだろうか。『存在と時間』で論じられている真理論、そしてハイデガー自身がテクストで見せた予期、また『形而上学入門』など後年の著作での同じ主題への言及から察するに、存在論の思索は、自らが立脚する地平を常に変化させ、再構築することで進行する。所謂「存在者から存在へ」から「存在から存在者へ」という構えの「転回」もまた、存在論が存在論の遂行者に要請する地平の転換によって語られる。存在、基層的分節に対して「それが何であるか」という言葉を割り当てることは何ら重要ではない。むしろ、存在への問いが常にその問いの立脚する地平を問い直すことを要求することによって、我々の哲学的問いが豊かにされるという、こうした多産性。そして、探求するものにとって常にその多産性が約束されていることが、この探求の最大の肯定の証である。

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以上。これで連載は終わりです。
この要旨よりも本論のほうが論証が余裕がある分、解りやすいはずだとおもうのですが、
ここに掲載するには長すぎる、仕方なしにせめて要旨を…ということでの連載。

自分の書いた文章を読んでもらいたいと言う欲求というのは、
単なる自己顕示でもないし、投じた努力と時間を認めて欲しいということだけでもない。
つまるところ
「読んで欲しいから書く」
ということがあるのだと、身をもって知りました。


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4と5 有難うございます>ぺけぽむさん。…掲示板では大したことも書けない私ですら、周囲に言われて書くはめになっている(泣)のですから、ぺけぽむさんのように読ませる力のある方は、書いたものがまとまった形になれば、多くの人に長く読まれることになるのではないか…という気がします。ぜひ書き続けてください。 (05/01/04 16:12)
幸運を祈る 連載お疲れ様でした。 (05/01/02 14:02)


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