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アラ還の愚行記。

Author:ポンスター ( Profile )
還暦になってからの愚行に係る備忘録

 ■ 2023/06/06 (火) マイナ保険証義務化の弊害


今日も淡々と仕事をした。
特筆することもないので、気になった記事を書いておく。


◆政府の「マイナ保険証」ゴリ押しが原因で、これから介護施設で起こる「ヤバすぎる事態」

いま、全国には約230万人の介護職員がいますが、どこの施設も慢性的な人手不足に悩まされています。
 2022年1月時点での介護職員の有効求人倍率を見ると、全産業での有効求人倍率が1.2なのに比べて、介護施設は3.68と、人手不足は深刻です。
 しかも、状況は年々深刻になる一方で、認知症患者が約800万〜950万人になると予想されている2040年には、約280万人の介護職員が必要とされる見込みですが、一方でその3割近い約70万人の介護職員が不足すると予想されています。
 こうした状況であるため、「働いてくれるなら誰でもいい」という施設も少なくありません。介護職の離職率は、2021年で見ると14.1%。全産業の離職率が13.9%ですから、定着率が高い職場とは言えません。
 しかも介護の現場には、様々な業者が出入りします。前編で登場した介護施設長は、「こうした不特定多数の人が出入りする職場で、誰の手にも届かないように個人情報を管理するのは極めて難しい」と言います。
 こうした施設では、健康保険証が様々な場面で使われています。たとえば、介護施設に入居している高齢者の多くは医者から薬を処方されていますが、自分でもらいに行けない人がほとんどなので、施設の職員が一括で処方箋を薬局に持って行き、受け取ってくるスタイルが一般的です。
 その時に、全員の健康保険証を見せて薬を受け取るのですが、これが「マイナ保険証」になると、全員分の「暗証番号」が必要になります。
 入居者のカードを管理するだけでも大変なのに、それに加えて「暗証番号」も大量に持ち歩くわけです。紛失してしまった時のことを考えただけでも不安になるという職員もいました。
全国保険医団体連合会が1219ヵ所の特養・老健施設に行ったアンケートでは、入居者の健康保険証を預かって管理しているという施設が83.6%ありました。こうした施設に、「もし健康保険証が廃止されたら『暗証番号』も含めて『マイナンバーカード』の管理ができるか」と聞いたところ、「管理できない」という回答が94%。健康保険証なら預かれるけれど、「マイナ保険証」と「暗証番号」を預かるのは難しいということです。
 しかも、「マイナンバーカード」は、ただ預かるだけでなく更新しなくてはなりません。「マイナンバーカード」の更新は10年ごと、「マイナ保険証」として利用するための更新は5年ごとです。
 更新は、基本的には本人が自治体の窓口でしなくてはなりません。病気や、身体の障害その他の「やむを得ない理由」により市役所に出向くことが困難であると認められれば、代理申請での交付が可能です。ただ、その際には、代理である証明書類や、本人が出向くことが困難であることを証明する資料なども提示しなくてはなりません。
 ひとつの特養あたりの入居者数は50人から100人が最も多く、中には100人以上入居しているという施設もあるので、「マイナンバーカード」の申請や、5年に一度とは言え「マイナ保険証」の更新を代理で行わなければならないのです。
 それも、ほとんど自力で判断するのが難しい状態の人の代理ですから、当然家族などが関わらざるを得ません。関係者に連絡を取って許諾をもらうところから始まり、気の遠くなるような作業が必要になるのは、だれが考えてもわかるでしょう。しかし、それを簡略化する具体的な指針は、まだ国から示されていません。
 前述の全国保険医団体連合会が各施設に行ったアンケートでも、施設側が「マイナンバーカード」の代理更新ができるか聞いていますが、93.5%の施設が「できない」と答えているのは、当然でしょう。
施設に入居することができずに、自宅で介護するという人もいます。こうした人の場合には、さらに大変な状況に見舞われそうです。
 在宅介護になると、カードや「暗証番号」の管理体制が施設よりもゆるくなりがちです。「暗証番号」を忘れないように、カードと一緒にわかりやすい場所に置いてあるご家庭が多いと思われます。ところが在宅介護の場合、家族や介護者だけでなく、リフォーム業者や宅配業者など不特定多数の人が家に出入りするため、個人情報流出のリスクも高まります。
 家に出入りする悪意のある人が、カードや「暗証番号」を盗んで悪用する危険もありますし、本人になりすまして、個人情報を見ることができるかもしれません。
 こうした犯罪に遭遇しなくても、認知症が進んでいると、カードをどこに置いたかを忘れてしまう可能性も高いため、紛失リスクが施設よりも高くなると指摘する専門家もいます。
 家族に要介護者を抱える方は、マイナンバーカードの申請についてこう話してくれました。
 「寝たきりの母を座らせての写真を撮って役所に行ったら、『背景が無地ではないからダメ』と言われ、無地の背景でもう一度撮っていくと、今度は『正面を向いていないからダメ』と言われ、他の写真も『目を閉じている』『髪が顔にかかっている』などで却下され、何度も撮り直してやっとカードができました。
 こうして苦労して手に入れたカードも、10年後には更新でまた写真を撮らなくてはなりません。今でさえこんなに大変なのに、10年後に母がどんな状況になっているのかと思うとゾッとします」
 それでも、同居していれば、負担をかけながらもなんとか家族を頼ることもできるかもしれませんが、問題は、一人暮らしの高齢者が増え続けていることです。
東京都は半数以上が一人暮らし世帯ですが、このうち介護が必要になりそうな75歳以上の一人暮らしの高齢者は、現在約51万人。これが、2030年には約60万人に増加すると推計されていています。
 一人暮らしで家族も近くにいないと、マイナンバーカードの管理などは、介護支援職員を頼るということになるのが現実ですが、これについて介護の専門家はこのように推測します。
 「現状では、介護支援職員は利用者の在宅生活を支えるので手一杯。マイナンバーカードの申請手続きを代行するとなると、それなりの手間や労力がかかります。カードの更新でさえ代理で行うのは難しいという状況なのに、紛失時の再交付の手続きまで頻発するだろうと考えると、とても手が回らないでしょうか」
 国は、市区町村による出張申請受付方式の手続き支援を検討しているようです。イメージとしては、介護支援専門員の求めに応じて市町村の担当者が該当者の自宅を訪ね、「マイナンバーカード」と「暗証番号」を預かり、更新などの手続きをするということなのでしょうか。
しかし、これについても問題は山積しています。東京都の某市の市長に尋ねると、怒りを込めてこう言っていました。
 「とんでもないことですよ。国がそのために人を派遣してくれたり、しっかり予算をつけてくれるなら受けてもいいですが、今までのように自治体に丸投げで、あとは知りませんというような状況だと、自治体の本来の業務に支障が出るのでとても受けられません。しかも、大切な『マイナンバーカード』を預かって、それを紛失するようなことがあったら自治体の責任になりますから、目も当てられない」
 要は、国も介護支援職員も自治体も、役所に出向けない自宅介護の高齢者のケアには及び腰ということです。
 そうなると、なんとかカードはつくっても、紛失したり5年目の更新ができないまま再発行の手続きもできず、無保険者になってしまうリスクが高くなるのは火を見るより明らかです。
 厚生労働省は、2023年2月27日、介護保険サービスを利用する際に必要な介護保険証も、健康保険証と同様にマイナンバーカードと一体化させる方針を明らかにし、早ければ2025年度にも一部の自治体で先行導入することを目指し、26年度には全国規模での運用を目指すとしています。
 介護保険証については、健康保険証のように「廃止する」という方針は出ていませんが、もともと健康保険証も昨年6月の「骨太の方針」では、「将来的に保険証の原則廃止を目指すが、『申請があれば保険証は交付される』」と明記されていて、国会答弁でも厚労相らが「カードの利用を強制するものではない」と答弁しています。
 それが一転して、「マイナンバーカード」の普及のために廃止となったのですから、介護保険証についても、どうなるかわかりません。
ここまで介護が必要な高齢者にとってのマイナ保険証の問題点を紹介してきましたが、障害者やひきこもりなど社会的弱者と言われる人たちにとっても別の問題があります。
 こうした人たちは、基本的には本人が役所の窓口に出向いて申請したり更新したりしなくてはならない「マイナ保険証」は、きわめてハードルが高いと言わざるを得ません。
 家族が代理で取得に出向くことも認められていますが、その場合は、本人の自筆の委任状が必要です。障害を抱えている人や、認知症で寝たきりの高齢者に、どうやって委任状を書けというのでしょうか。
 医師や介護支援職員、自治体職員などの手を借りることもできますが、複雑で面倒な作業が増えることは間違いありません。当然、作業に当たる当事者は、及び腰になりそうです。
 読者の方の中には、高齢の方もおられると思います。自分の足腰が弱り、認知症を患うようになったら、「マイナ保険証」の更新に役所の窓口まで行けますか? もし自分で行けないなら、本人が行くよりも複雑で面倒になる代理申請を、誰が代わってやってくれるのでしょうか。
 そういう意味では、体制が整わないまま見切り発車で健康保険証の廃止まで決めるのは、まさに「弱者切り捨て」の暴挙だと言わざるをえません。
日本の「国民皆保険」は、いつでも、誰でも、どんな状況でも、必要に応じて適切な医療が受けられるようにつくられてきた、世界に誇れる制度です。
 そこで大きな役割を果たしてきたのが、本人が請求しなくても、自動的に送られてきて、誰もが使える健康保険証ではないでしょうか。
 これをわざわざ廃止し、申請できる人だけが医療の恩恵を受けられる制度に切り替えるというのは、誰のための社会保障制度なのかと言わざるをえません。デジタル化により様々な制度を効率化することは否定しませんが、そのことで不利益を受ける弱者がいることを、政府はもっと真剣に考えるべきだと私は思っています。


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ポンスター 長いですよ d( ̄  ̄) (23/06/07 23:45)
記入なし 凄い長文でした、、、 (23/06/07 08:25)


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