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忘れ物


 ■ 2010/04/10 (土) 台北好日


出張10日目。最終日。
夜7時。がっつり雨。
オフィスを出て、
MRTに乗りホテルへ移動する。

電車で特にすることがないので、ふと前に座っている子を見る。

見た事がある顔で、聞いた事がある声がする。

それは懐かしい顔で、懐かしい声だった。Aだった。
Aは相当驚いていた。まあ、こっちはこっちで電流が走った状態だったけれど。

気づいたら降りる駅で降り損ねていて、とりあえず一緒に復興駅で降りることにした。
外はもう4月なのに肌寒く、マフラーをする人も結構いた。

6年。

その時僕は大学生で、短期留学で一カ月ここにいた。
Aとはクラブで知り合った。話をするとたまたま、同じ学内の学生だった。
それから台湾にいる間はほぼ一緒だった。
台湾人でおおざっぱな性格で、抜けている所が可愛かった。

6年か。

とりあえず復興駅近くの居酒屋(日本のとはちょっと違うけど)に行った。
まだまだ外は寒いけど、中は禁煙だった為テラスに座ることにした。

Aは席を立って、しばらくして戻ってきた。
前吸っていたタバコを覚えていたらしく、それを買ってきてくれた。
僕もAが吸っていたタバコを覚えていた。でも今のは違っていた。

何から話せばいいか迷った。
6年前、日本に帰国してから確か1カ月くらいは連絡を取っていたが、
自然に無くなった。考えるのをやめるようになっていた。
たまに夢に出てきたが、そのうち消えていった。

Aには今彼氏がいるらしい。僕も今彼女がいる事を言った。

改めてAを見ると、まったくと言っていいほど昔と変化がない。
くりくりした目や口元に、ちょっと前より化粧が濃くなった位で
ほとんど時間が戻ったような感じだった。

記憶から消えかかっていた彼女が、こうして目の前にいると妙にリアルで
生生しいもんだと思う。

そのころより僕は多少広東語が話せるようになっていて、Aは褒めてくれた。


注文しすぎて余った串物をどうしてくれるんだと店主に怒られたので、気まずくなってさっさと店を出た。

クラブに行こうとAが言い出したので、どうしようか迷った。
6年前にはなかった101ビルの地下にいい所があるのは知っていたが、次の日の朝が早いので断った。

次の日がもし休みだったら行ったかな。

いや、行ったら間違いなく、色々まずいことになると思う。。
普通に可愛いし。。楽しいし。

6年。

確かあの時は夏休みだったのでむちゃくちゃ暑くて、どさっとスコールに良くやられた。
良く考えてみたら一度も好きといったことはないし、言われたかな。。記憶にないな。

う〜ん特に成長もしてないし、、人間はそんなに変わらないのかな。
少しずつ、ズレが出て、例えば吸うタバコや化粧や就職などで、それで人間は変えられていくけれど。

それにしてもあれだけ日本語教えたのに、完全に忘れてやがった。
ほんと、なんも変わってないよ。


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