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爺放談


 ■ 2009/09/24 (木) 愛と青春の旅立ち・・・・・13


朝、起きたらもう彼女の姿はありませんでした。

テーブルの上、脱ぎ散らかした服などが綺麗に片付けてあり、昨日の夜は何も無かったような雰囲気を出来るだけ作り、彼女はこの部屋を出て行ったのでした。


(昨日は大変だったな〜!)

(この部屋に来てもグズグズだった・・・・俺も何時の間にか寝てしまったけど彼女は寝たのだろうか?)

(それにしても彼女には悪い事しちゃったな、もう嫌われてしまったかも知れんな・・・・)


彼は昨日の疲れも残っていました、それに、眠い目をさっぱりさせる為にシャワーを浴び洗面台へといきました所、洗面台の鏡にそれこそ「ルージュの伝言」があったのでした。


「昨日はごめんなさい!お店で待ってます・・・・・」


彼はその伝言を見て思いました。


(まだ嫌われてはいない様だ・・・・・)


その日は彼にとって運悪く、鉛の様に重い体ですが、それに鞭打つが如く忙しい日でした。

最初の内は彼の体がそのペースに着いて行けず、周りから叱咤の声が飛んできたのですが、それもしばらくして、彼にとってはその忙しさが良かったのか徐々に体もペースを取り戻し、何時もの彼の状態に戻っていました。

そんな時上司から彼に声が掛かったのです。


「××君!」

「はい!」

「少し話があるので手が開いたら私の所へ来てくれんか?」

「はい!分りました!」


彼は「何の用だろう?」と思い、取り合えずやり残していた資料整理を済まし、上司のデスクへと行きました。


「はい!部長なんでしょうか?」

「うん!ここではなんだから会議室へ行こうか?」

「は・はい・・・・」


彼はこの意味が全く分りませんでした、取り合えずこれまでの彼の仕事に落ち度は無く、それどころか彼の押したプロジェクトは順調な経緯を保っていて、このままよほどの事が無い限り、会社にとって一定の利益を上げる事は明らかの物となっています。

ですので彼にとってはこの部長の呼び出しは全く分からない事で、しかし、何か彼にとっては良くない事の様な気がしたのでした。


「ま〜座りたまえ!」

「はい!失礼します!」

「××君!今君がやっている仕事、なんか順調のようだね?」

「はい!おかげさまで、部長やその他の上司、それに諸先輩のお知恵をお借り出来て今に至っております!」

「うん!謙虚だね!その気持ちを忘れてはいかんよ!うん!」

「はい!有難うございます!」

「ところで君はうちに来てもう何年になるかね?」

「はい、そうですね、もうそろそろ10年目になるでしょうか・・・・」

「そうか!君は最初どこの部署にいたのかね?」

「はい!最初は支店での営業として配属されました!」

「へ〜!そうか!どこの支店だったのか?」

「四国の松山が最初です!」

「ほう、そうだったのか!と言う事は本社には何時からだ?」

「はい!3年前です!」

「そうか!それで僕はあまり君の事が分らなかった訳だ!」

「はい!」

「そうかそうか・・・・で、話という事なんだが!」

「はい!」


少し彼は緊張しました。

今記述したように彼は最初から本社勤めではなく、最初は地方からの出発でした。

その理由は色々有りますが、大方の理由は出身大学がかなり影響します。

彼の会社の様な大手では、普通は指定大学制度を敷いており、ある程度の上位大学を出ていなければ入社試験すら受けれません。

彼の出身大学が、その指定大学ではありましたがその中でも中位で、しかも彼は浪人もしており色々な面で本社勤務は敵わなかったようです。

しかし彼の持ち前のバイタリティーで、彼の目標であった本社勤務を大変な努力に努力を重ねて勝ち取ったのでした。

そんな物ですから彼はこの部長の呼び出しに、並々ならぬ不安を持ってしまうのは仕方の無い事でしょう!


「いや、ほかでもないのだが・・・」

「はい!」

「いや!君をね!本社勤務から外へ出てもらおうと思って居るのだが・・・・」

「えっ?」

「いや!悪い話ではないよ!今、うちが取り組んでるメインの取引は石油を初めとした原材料が主だって言うのは君も知っていると思うが、若干弱い部分を君という人間を送り込む事で活性化を図ろうというのが趣旨なんだ」

「はぁ?」

「そういう訳で君に行って貰いたいのは少し遠いが、インドなんだ!」

「えっ?・・・・インドですか?」

「そうだ!インドだ!」

「・・・・・・・・」


彼のこの辞令は、いわゆる栄転で、この移転先で、ある程度の成績を上げれば間違いなく本社に戻った後はある程度の席が用意してあり、これは彼の取って大きなチャンスとなるのですが・・・・・・


(おい!どうする?確かに俺にとって良い話は間違いない!しかしママとはこれでお終いになるのは間違い無い!)

(この話を受ければ約半年で俺は日本を出て行かねば・・・・リミットは半年!こんな時間で何とかなるのか?)

(おまけにインドへ行ったら最低でも5年は帰ってこれんだろう・・・・・)

(仕事と女・・・・何を考えることがあるんだ!男は仕事だろう!当たり前じゃないか!・・・・・・しかし・・・・・・しかし俺にとってママは特別なんだ・・・・)


彼はママと会う前ではこの話を諸手を挙げて喜んだ事でしょう、しかし今の彼には複雑な心境でしかありませんでした。

彼はその日、どうしてもママの顔が見たくてお店へ足を向けるのでした。


「いらっしゃいませ!」

「はは!今日も来ちゃった!」

「何を仰いますか!何時でも来て下さい!」

「うん!」

「さ!どうぞ!今ママを呼んできます!」

「あ!いいよいいよ!ママも忙しいでしょ!」

「何を仰いますか!これはどの様なお客様でもママにお伝えせねばなりませんので・・・・」


彼は席に座り、しばらくして・・・・


「ま〜!××様!何時もご贔屓にして頂き本当に有難うございます!今日もゆっくりしていって下さい!PANPAN!P子ちゃん!××様にお氷とお飲み物を・・・・」

「は〜〜〜い!お持ちしま〜す!」


そう言ってママは隣に座り、P子ちゃんが持ってきたお酒を作り、彼に手渡しました。


「××様!私も頂いて宜しいでしょうか?」

「えっ?あっ!どうぞどうぞ!」

「有難うございます!それでは・・・・」


彼は挨拶だけで直ぐ他の席に行ってしまうだろうと思ってましたので、ママのこの対応は想定外でした、しかしこの想定外は彼にとっては思いも掛けぬ事でした。


「P子ちゃん!ここはしばらくいいから他の所へ入ってくれる?」

「えっ?あっ!はーい!」

「ごめんね!後でまた呼ぶかもしれないからその時はよろしくね!」

「は〜〜〜い!」


ママのこの指示は、P子ちゃんにとっては、かなり気が気じゃない物でしたがママの言う事には逆らえませんのでしぶしぶ了解せざるを得ませんでした。

しかしこれは彼にとっては最高の機会で、しかしなぜ?ママは自分の席に着いたのかは知る由もありません、しかしどうであろうと彼は隣にママが居る事だけで久しぶりの事でもあり、感慨深いものでもありました。


「××様?」

「は・はい!」

「昨日は大変ご迷惑をお掛けして本当にすみませんでした!」

「えっ?なぜ?」

「うちのP子がお世話になっちゃって・・・・・」

「あっ!その事ですか?でもどうしてママが・・・・・」

「フフ、それは私のお店の娘達の事、何でも知っていないとママは務まりませんわ」

「そういうものですか?」

「そうですわ!それで昨日!あの子、ご迷惑をお掛けしましたでしょ?本当に申し訳ございませんでした、あの子に代わって私もこの通り頭を下げさせて頂きます。」

「いえ!とんでもない!昨日は僕の方が誘ったのです、P子ちゃんは全く悪くないし、それに迷惑なんてとんでもないです!スゴク楽しかったですよ!」

「まぁ!××様ってお優しいですのね!そんなところにP子ちゃんも惚れてしまうのでしょうね〜!^^」

「えっ!」

「フフ!私は何でも知っていますのよ!フフ!^^」

「ど・ど〜して?」

「だって分りますわ!あの子を見ていれば!^^」

「そんなものですか!ママには敵わないな!」

「フフ!そうですよ!私には隠し事が出来ませんことよ!お気を付けあそばせ!^^」

「でも・・・・俺には関係の無い話ですよ!」

「えっ?どうしてですか?」

「俺には・・・・・俺にはもう決まった人が居るからですよ!」

「あら!もうそんな方がいらっしゃるのですか?あらあら、これじゃP子ちゃんも大変ね〜・・・・」

「何を言ってるんですか!俺には・・・・」

「あっ!ごめんなさい!灰皿が溜まっていますわ!直ぐ取り替えさせますので!」


ママは彼のその後の言葉を遮りました。

「それ以上は言ってはいけません!」と言わんばかりの話の切り替えに、彼は言葉を止めざるを得ませんでした。


「ごめんなさいね!気が利かない従業員ばかりで本当にごめんなさい!」

「いえ!そんな事・・・・・・・」

「でも・・・・・P子ちゃん・・・・・相当本気みたいでしたわ!少し可哀相ですがこれも男と女、どうしようもない事ですわね!あの子にはそれとなく伝えておきますわ!××様もこんな事にお気を取られないで、また、何事も無く店へいらしてね!」

「それは昨日俺の方から言ってあります!その事は大丈夫ですからママはP子ちゃんにこの事はもう触れない様にしてやって頂けますか?」

「そうなんですか?分りました!それでは私はもうこの事は無かった事に致します!それで宜しいのですね?」

「はい!それで・・・・・」


彼はその事よりも、前のママの前での自分の失態を謝る事が、どうしても告げたかったのでした。

せっかくママが横に着いている今を逃してはもうチャンスは廻って来ない気がする事と、それをきっかけにもう一度チャンスを掴めれば・・・・と言う甘い期待も含んだ事でした。


「ママ?」

「はい!」

「ママ!俺の方こそ謝らなければなりません!」

「どうしてですか?」

「ママとのあの夜の事です!俺はママに大きな恥をかかせてしまいました!俺は取り返しの無い事をしてしまいました!男として、俺は本当に情けない事をしてしまいました!あれからその事ばかりが頭に残って、何をやっていても情けなさが込上げて来るのです!」

「あらあら!それは困った事ですね〜!でも・・・・・・・あの夜の事って?何のお話か私には分りませんわ・・・・」

「ママ!本当にごめんなさい!俺を笑ってください!あの時、俺は何も出来ませんでした!本当に情けない奴です!こんな俺を笑ってやってください!しかもそんな男がママの事を好きだなんて・・・・・100年早いです!未熟者なんです!」

「何を仰っているのか分りかねますわ!それを私にどう言われてもお答えに困りますね〜^^」

「ママ・・・・・どう思われてもけっこうです!俺はダメな奴なんです!」

「フフ!良いでしょう!私もおいたが過ぎましたわね!でも・・・あの夜の事、私は何にも気にしておりませんよ!ですからその様な事は仰らなくて結構ですわ!」

「いや!ママが気にしていなくても俺がダメなんです!」

「そんなにお気になさらないで、男と女、色々な事がありますわ!そんな事で一々お気になされていては男を下げましてよ!^^」

「ママ!」

「男は・・・・・男が、たかが女一人のために頭を下げる物ではありませんわ!私はそんな××様を見たくはありません!もっとデンとして構えていてください!」

「・・・・・・・・・」

「××様は日本を代表する商社の方なのですよ!そんな男がたかだか夜の女に惑わされてはいけません!貴方はもっと素晴らしいお方なのですよ!日本中の男が羨ましくなるほどのポジションを今、貴方は走ってらっしゃるのですから・・・・」

「俺はそんな・・・・・・」

「××様!貴方にはもっと!  もっと私のような夜の女ではなく、もっと素晴らしい女性が貴方をお待ちしておりますわ!ですから・・・・・」

「違う!」

「えっ?」

「違う!俺はそんな大した奴でも、世の中の男が羨ましくなるような男でも何でも無い!」

「・・・・・・・」

「俺は本当に情けない奴なんだ!俺が一番よく知っている!俺は女一人の気持ちも分ってやれない酷い奴なんだ!」

「××様・・・・・」

「しかし!   しかし!   しかし俺は!  こんな情けない奴でも俺は!」

「××様!お気を確かに!これ以上は言ってはいけません!お気を確かに!」

「俺はママの事が好きなんだ!」

「・・・・・・」

「俺は・・・・ママの事が大好きで本当に惚れているんだ!こんな情けない奴だが、迷惑だろうが、俺はママが本当に好きで好きで大好きでどうしようもないんだ!」






つづく


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はいむるぶし 軍神殿 引き際の美学!う〜〜〜ん!なんと男らしい言葉ではありませんか〜!今一番その言葉が似合わない男!はいむるぶしがこの日記を書いておりまする!殿!ご容赦を・・・・^^ (09/09/25 15:24)
軍神 インドはカレーが美味しい、象が道端にいる、人が10億人もいる大変だ、男には引き際が大切だ、引き際の美学を知らぬ男は未練がましい、女性も腐るほど世界中にいる、釣れない超・大物は諦め、手ごろな大物を狙うべし、女性も魚も仕事も一緒さ。 (09/09/25 13:08)
はいむるぶし 名無しさん その比較は光栄ですね!弘兼に挑戦状を叩きつけますか?へへ!私のほうが面白いと言わせてやる!^^ (09/09/25 13:07)
はいむるぶし ここへさん へへ!まいど!何時もお付き合い本当にありあとやす!だんだんと佳境に入ってまいりました!その後の展開もよろしく!^^ (09/09/25 13:05)
名無し 「島耕作」ワールドの様相になってきましたなw (09/09/25 12:19)
ここへ ママとはつきあえないでインドに行くことになるのでは? (09/09/25 06:01)


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