爺放談

少し前ラジオから矢沢永吉の声がこぼれていたので仕事を少し休憩して聞き入ってしまいました。

私は特段、矢沢永吉の事は興味がありませんでしたが久しぶりに聞く矢沢節に耳を取られてしまったのです。

その矢沢のコメントの中で大変面白く、興味を注ぐ一節がありました。

それは矢沢永吉が１９９７年、イギリスで開催された「エルビス没後２０年」を記念して催されたロックフェスティバルにアジア代表として選ばれ、それに参加した時の事でした。

その時の事は私も良く憶えていて、どうして矢沢がこの様な世界的なフェスティバルに呼ばれたのだろう？と思ったものでした。

なにせそこに出演するアーチストは世界的に有名な方達ばかりで、ロッドスチュアートやボンジョビ、ロバートパーマー、スティーブウィンウッド、チャカカーンなどなど・・・どれをとっても大スターで、もちろん世界的にも有名なアーチスト達ばかりです。

そこに我等が世界の矢沢が彼等と一緒に出演するというのですから、これは日本ロック界ではとんでもない話です、しかしいくら世界の矢沢と言われていても所詮はそれも日本だけの話で、そんな矢沢も本当の世界では全くの無名で、更に言うなら、ロックの文化は西洋だけのものでアジアのどんな奴がどんな曲や歌を歌おうと相手にもされない世界です。

そんな状況の中に矢沢は飛び込んでいったのですから、その時の話は実に興味深い話です。

そして話はやはり予想通りで、矢沢はそのフェスティバルでのリハーサルから本番終了までの間、一貫して日本ロックはまだまだ世界の中ではヒヨッコだと痛感するばかりで、自分の小ささを見せ付けられたと言っていました。

しかしそんな中で、矢沢はこうも思ったといっています。

「ロックの世界では日本はまだまだだけど、俺もこんな思いをしてやっぱり日本はスゲーと思ったよ！」

「だって企業では日本って世界一でしょ！」

「戦後焼け野原からここまで来たのは企業戦士が頑張ってきたからこうなれたんでしょ！」

「当時はその時の俺と同様、西洋の奴らに相手にされなかったはずだ！それでも負けずに必死に努力して西洋の奴らに追いつき、しかも追い抜いたんだから日本って凄いと思うし企業で働いている奴らに頭が下がると今回の件で本当に思ったよ！」

「俺も今はまだ西洋の奴らに相手にされてないけど日本の企業マンのように、いつかこの世界でもトップを取って見返してやりたいね・・・・」


それまではさほど矢沢永吉と言うアーチストは私の中では大して気にも留めなかった一人ですがこの話を聞いて大分印象が変わりました。

世界では確かに無名ですがそれでも日本ではやはり世界の矢沢です、やはり頂点を極める人は自分の置かれている位置を正確に把握し、それを謙虚に受け止め、冷静に分析できる所は流石です。

矢沢が言う様に、世界を相手にし、どの分野でも成功するというにはまだまだかもしれませんが、それでもこんな極東でしかも何の資源も無いアジアの島国が、一つの分野ですら世界のトップを取る事も奇跡に近いのにそればかりか多くの分野で世界の頂点を競える実力は、実に、本当に矢沢ではありませんが「スゲー！」の一言に尽きます。

このサイトの掲示板でもありますが、日本を軽視している内容の書き込みをしている人達はこの日本を本当に冷静に判断しているのでしょうか？

前回の日記にも通じる部分ですが、批判は簡単に出来ます。

これまでの道程を血の滲む努力で開拓し、道筋を作ってきた先人達！そしてその道筋を大事にし、更に大きくしてきた人達、そしてこれからまた新たな道筋を開拓しようとしている人達！

成功するか失敗するかは大きな問題ではありません、そのプロセスを踏む事が重要で、それがあってこそその先に大きな未来がやってくるのです。

矢沢自身、彼も過去から全てが順風だった訳ではありません、幾多の苦難を乗り越え日本ロック界の現在の地位があるのです。

そんな彼だからこそ分野は違えどその苦難や努力を分り、そしてそれを謙虚に認める姿勢を持つ、これが一流の証なのでしょう。


今後も、矢沢永吉の様なロックミュージシャンが多く出てきて、この分野でも日本のロックが世界を席巻する時代がいつか来る事を願ってやみません。


矢沢永吉！彼は実にカッコいいロック魂を持ったミュージシャンでした。