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ヒモと呼ばないで

9年ぶりに帰ってきました。誰か助けて。

 ■ 2003/12/23 (火) 配属初日


Aさん「テンカンブ」の連絡は…。
俺「転換部?展観部?点火部?てんかん部?…。」

正しくは「店幹部」。
聞き返せばいいんだろうが、それも出来ず、業務終了間際でやっと理解できた。

世間様のスピードについて行けていない事を「はじめまして」の挨拶からわずか数分間で、あっさり思い知らされる。

仕事内容は、主に店内巡回と出入りチェック、それに施錠・閉店業務の3つだ。

こう言うと簡単そうだが、とにかくその前提となる、階段、出入り口、通路、防災設備、関係者のいる部署、売り場の配置…などを覚えるのが本当に大変。
今の俺には本当に文字通り迷路だ。
警備員がそれじゃ話にならないな。

それに加え、店長、副店長の「店幹部」を始め、自分の会社の所長、関連部署の各責任者、それにもちろん同僚になる人の顔と名前を一致させなくてはいけないし、外線と内線で微妙に変える電話の応対も、間違えると即お客様からのクレームにつながるということで、軽んじられない。
初日の今日も既に、受けるのもかけるのも、一応一度づつする機会があったが、もちろん今の段階では、まるで子供の使いみたいなものだ。

一番楽な出入りのチェックも、外来と従業員とで違うし、外来でも、一般と配送とで違うし、従業員でも、IDカードだけでいい人と、バッジを渡しサインをしてもらう必要のある人と分かれる。
さらに、私物を専用の棚に置く許可を出すのにいちいち札を出したり、外来には社員証かそれに変わる身分証明書の提示を求めることもする。
それに何と言ってもコンピュータ制御された防災設備の使い方や、専用無線・携帯電話の使い方、シャッター・電子錠の閉め方、スプリンクラーの制御方法…もうわけがわからない。

そんな状態のまま閉店業務に入る。

モタモタしていると、入り口の施錠が閉店時間に合わなくなってしまうので、流れるように無駄のない手順でこなさなければならない。
まだ店内に残るお客様の邪魔にならないように、スムースにやらなければならないんだ。

で、この通常業務は何事もなく出来て当たり前で、肝心なのは、有事の場合だっていうんだから、たまらない。
初期の処置を適切に行い、店の損失を最小限に止め、お客様と従業員の命と財産を守り、同時に法律に従って、然るべき所へ通報することだって言うんだから、自信なんてないよ。

「〜でも」やるか、「〜しか」できない、っていう意味で「でもしか」仕事っていうとき、警備員って必ず例えに出るような気がするけど、間違ってるよ。

ちゃんとやろうと思ったら、そんなんじゃ絶対無理。
ちゃんとやろうとしなけりゃ、出来やしないし。

…俺にできるのかな。

幸い今日付きっきりで教えてくれた人は、気のいい、親切な人だったので本当に本当に助かった。

でも明日は、恐い人との業務になるらしい。
そういう人って、単にその人がうるさいというだけじゃなく、大抵「連れ」がいるんだよな。
「マーフィー」って名前の。

大丈夫かな。

そうこうしているうちに、終了時間の23:00を迎える。
あまり最近は行かないが散策の1コースになっている馴染みの道を歩いて帰途につく。
帰りに少し夜食を買って帰ると、いつもならもう寝ていてるはずの妻がこの時間まで起きていて迎えてくれた。
おまけに、お義母さんからのお裾分けのロールキャベツと南瓜の煮付けを時間に合わせて温めて待っててくれたみたいだ。

本当なら買い込んだそばめしとチキンライスのおにぎりとはあまり相性はよくないはずだが、美味しかった。

娘はやっと寝たということなので抱っこもチュウもあえてせず、寝顔を見るだけで我慢した。

この後、今日一日を振り返ってみて不思議なことに気づく。
なんと、ほとんど疲労感はない。
変に緊張もしなかった。

いや、実際は、気持ちも張っていただろうし、身体の疲労もかなりあるはずだ。

それでも今こうして、いつものように何事もなくPCに向かっていられるのは、きっと寝ないで待っててくれた君のおかげだね。

顔に吹き出物も出てないよ。

ありがとう。




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