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ヒモと呼ばないで

9年ぶりに帰ってきました。誰か助けて。

 ■ 2003/12/19 (金) 研修終了


6:00 起床。
7:18 電車に乗る。
8:45 研修場所に到着
9:00 研修開始
11:45 昼休み
13:00 講義再開
18:00 終了・解散
19:55 帰宅

一晩寝ても、まだ顔のおできは治ってない。
とはいえ膿は乾き、瘡蓋(さかぶた)のようになってはいるが。
ストレスに負けた無力感と、自然治癒力の力強さとが混合した気持ちで、最後の研修に臨む。

「おい、朝から寝てちゃダメだ!」

背中を2回軽く叩かれ、目が覚める。
まだ1時間目だ。
最終ラウンドの開始ゴングを聞くや否や、睡魔の猛攻に耐えきれず遂にKO負け…というところか。

瞬間、「採用取り消しだ!」と言葉が続くかと身構える。
正直、ここまで何とかやり過ごし、研修最終日にそうなったら、いくら俺でもさすがに一瞬は凹むだろう。
しかし同時に、そうなればまたしばらくは、かつての「ハローワーク⇔家」のループに戻れるから、それもいいか…などと思うに決まってる。

俺はそういう男。
5日間くらいの研修なんかで変わるかよ。

しかし、その後も淡々と講義は進み、最後に出題箇所が予め宣言されていた「警備業法に関するテスト」と、この研修全般についてのレポート制作を以て、研修は終了した。

そして最後に、各事業書の責任者に渡す「警備員登録証(?)」のコピー(?)の入った封書とタイムカード兼用の「ID磁気カード」と「ネームバッジ」、それに「労働契約書」を手渡されてる。
すでに採寸済みの制服は会社から直接事業所へ郵送するようだ。

研修が始まったときから感じていたが、本当にちゃんとしてる会社だ。

丘陵の入口みたい。
そこもちゃんと看板が出て、人の腕ほどの丸太で作られた階段が「敷居の高さ」を解消し、安心感を与えてくれる。

そして、それは…一旦落ち葉でも積もれば、主夫願望を捨てられない無能な男をして、歯が浮きそうな言葉を言わせしめる程快適な尾根道がそれに続き、「登山」ほどキツイことは決してなく、かと言って「トレーニング」をしようと思えば自分を鍛えることにも最適で、おまけに池も広場もあり、バードウォッチングも出来て、最短距離で尾根を突き進めば「駅」もすぐ近くにある…「丘陵」の入口だ。

しかし、だ。

こんな「丘陵」でも、俺は不様に転ぶんだよ。
あんなに気を付けていてもダメなんだ。

「山」じゃない、「丘」でだ。
恥ずかしい叫び声まで上げて。
服も泥だらけにして。

そして、こんな情けなさを感じながらも、その後も俺はここに通っている。
理由は二つ。
一つは、ここが嫌いになれないから。
そんなことがあったくらいで、ここの良さは薄れたりはしない。

もう一つは、ここが拒まないから。


…気持ちがどうあれ、流されていくことにした。
それなら、ここが好きになれるなら、それに越したことはないだろう。
研修に集まった男性の顔ぶれが、全員年金を貰える年代の「白髪」であることからも分かるように、幸いここは「挑戦」「登山」などとは一線を画した、「散策」「里山」の性格を持つ職場だ。

それなら仮に転倒しても、通い続けるのもいいだろう。

しかし、ここは企業だ。
丘陵は俺を拒んだりしないが、会社は違う。

「ちゃんとしてる」会社が「勝手に転倒した」社員、じゃなかった準社員にどういう対応をするかなんて、考えるまでもなく明白だ。

その時「無力感」はより大幅に増幅されて、顔面に思い切りぶつけられるに違いない。

でも、俺はもう闘わない。
無力感がこれ以上大きくなってしまっても、放っておく。

「自然治癒力」が発揮されるにも、そんな気持ちになれた時に初めてそうなる気さえする、なんて言っても負け惜しみにしか聞こえないだろうか。

でも、本当に今はそんな気がするんだ。
本当に。




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