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ヒモと呼ばないで

9年ぶりに帰ってきました。誰か助けて。

 ■ 2003/12/07 (日) 妻の休日/川越散歩


妻の休日。

妻「ちょっと、早く起きてよ。帰りが遅くなっちゃうでしょ。」
俺「…えっ、どこ行くの。」
妻「どこじゃないよ、あなたも行くの。川越。」
俺「川越?なんで?」
妻「最近行ってないなぁって言ってたでしょ。」
俺「…言ったけど。(それならまず行くかいかないかを決めるのが筋だろ)」
妻「行きたくないの?」
俺「行く。」

異性の誘い方を学ばないまま年をとる女性は多い。
こいつもか。

久しぶりに来た川越は、市民の日とやらで予想以上に混雑している。
でも逆に、この日だったことで、完成してまだ日の浅い「お祭り会館」に無料で入れたというのはよかったが。
普段は¥500とのこと。
「山車」を間近で、それも高所など様々なアングルから見られたりするのは良いと思うし、ディスプレイもそんなに悪くはないと思うが、実質それだけ。
俺には高く見積もっても¥300がせいぜいだと感じられた。
今日は無料というだけではなく「囃子」の実演もあるということだったが、少し時間待ちするようなので、これは次回の楽しみとした。

この時期に来れば喜多院に出向くのが常だが、駅から多少遠いため、ベビーカーの娘の事を考え、この蔵造りの町並みのある一番街周辺に絞って散歩した。
この時期の喜多院は、いつもの八国山に比べればかなり「赤」な場所だけに、どんな感じか見たかったが仕方あるまい。

久しぶりに知人を訪ねて、娘の成長を喜んでもらったり、途中で見つけたネコや犬と楽しそうに娘がじゃれ合う姿を見ていると、顔の筋肉がいつもより多く使われていくのが自分で分かる。
っていうか、こんなに俺の顔って強張っていたのか。
娘は今回川越は2度目だが、歩いたり、食べたりできるようになってからは初めてなので、実質「小江戸初デート」だ。
俺はきっとだらしない顔していたんだろう。
フィルム1本分だけだが写真を撮ったので、後で妻に呆れられるかな。

それに妻と二人で、終始関根勤でもしないような下らない話をしながら、お決まりの「イモ菓子」を食べ歩いたりしたのも本当に楽しかった。
結婚前にもよくここには二人で来たが、そのときとはまた違う楽しさだ。

特にお目当ての菓子屋横丁「ふたみ(?)」のイモの「壺焼き」を娘と三人で一緒に食べたのはよかった。
まるで、一度蒸かして甘く味付けした後に漉して、それをもう一度皮に戻したかのようなサツマイモ独特の甘さを娘も気に入ったのか、ニコニコしながら、中の小くらいのイモの約半分をあっさり平らげた。

美味しかったんだ、よかったね。
また来ようね。
今度は、パパしゃんと二人切りで来るのもいいよね。

これ1本で¥150。
今までの消費生活の中で、最高に価値ある¥150の出費だ。

妻といえば、まるで意地のようにこの時期に「イモソフトクリーム」なんかを食べてる。
俺が目の前で湯気の立ってる紫イモまんじゅうや、醤油の香りが何とも香ばしい焼き団子をパクついているというのに、あまり食指を動かさず、とにかくイモアイス、イモアイスとまるで呪文のように繰り返しながら、見慣れないイモスティックだの、何故か漬け物だの、笊豆腐だのを買っている。

いつも会社で油の多いものを食べたり、豆腐や漬け物なんか家でしょっちゅう食べてるのに、地のモノを味わうとか季節感というものはないのか、と聞くと、彼女は逆に、いつもと同じ物を違う場所で食べたり、季節のミスマッチを楽しめない方が子供だと宣う。
二人とも、普段顔や体にこびり付いてる重さから自由になって、いつもよりよく喋って、よく食べて、よく笑った。

帰りに、これもお決まりの出世稲荷の大銀杏にお参りしてから、帰途についた。
参道の入口に2本ある樹齢600年とも言われる大木の1本には、これからの自分や家族の事を、そしてもう1本には川越の平和と繁栄をお祈りすることにしているが、今日はいつもと違い、向かって左の大木にはこれからのことより、この日の楽しさにまず感謝をした。

そして、こんな一日を与えてくれた川越の街のために、もう1本にいつもより念入りに祈った。
今日もしこの街に来なければ、こんな時間が過ごせたかどうかわからないんだから。

こんな日もあるんだ。
これからもこんな日が続くのだろうか。

大丈夫だ。
この600年の「黄色」が守り神なんだから。

きっと大丈夫だ。


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