れんしゅう

　いつも余裕がなかった。
とはいえ、多くの時間を無駄にした。
だらだらもした。
ごろごろもしてた。
今もだらだらしている。

　でも、でも仕方がなかったんだ。

　仕方がない。そう言い訳をしてみる。

　大学のときは毎週実験があった。
実験というほど大そうなものではない。
小学校や中学校でやる実験とそれほど変わらないと思う。
　ただ、毎週その実験のレポートを提出しなければならなかった。
僕にはそれがとても重荷だった。
もちろん、それは僕だけではないだろう。
まわりのみんなも、大変ながらもきっちりと課題をこなしていたわけだ。
僕だけが苦労を背負い込んでいたわけではない。
だが、僕はいつもそこから逃げ出そうとしていた。

　ひどいレポートだった。
結局だれかのレポートをほとんど写していた。
だって、なんの実験をやっているんだかよくわからないんだもん。
原理だってよく理解できないし、
ましてや、その実験の考察なんてかけるわけないじゃん。
実験の目的を把握するので精一杯。
　レポート提出日の前日は決まって徹夜だった。
写すなら、とっとと写してしまえばいいものを、
ぎりぎりの時間まで、悩んでいた。
　できることなら、自分の力で、、
そう思いながら、時計の針は午前12時を回る。
気がつけば、先輩にもらったり、友達に回してもらったりした
レポートを写していた。
　実験報告書を作成する能力は身につかなかったのだろう。
僕はあまりにも馬鹿すぎた。知らなすぎた。

　そうして僕は逃げ出した。
逃げ出すことによって、自分をさらに追い詰めてしまった。
そもそものはじめから間違っていたんだ。

　レポートを提出しなかった。

　そして、実験に出席しなかった。

　そして僕は留年した。

　つい先日も同じようなことがあった。

　会社が嫌になった。

　次の日会社に行かなかった。

　無断欠勤した。

　その次の日、会社にTELした。

　本社に行くようにいわれた。

　そこで、退職の手続きをすませた。

　人はあらゆる組織に所属している。
学校、部活動、習い事、塾、予備校、ボランティア活動、友達、会社、家族、親族。
様々な組織に所属して生きている。
　これらの中でもっとも厳しい組織が『会社』であると言えるかもしれない。
僕はそう思っている。
　まず、僕がなによりも苦に思うことは、
その組織の中で自分の居場所を見出すこと。
僕にはこれが何よりも大変なことなのだ。
　つまり、僕は昔から組織の中に溶け込むという作業、
みんなが遊んでいる輪に対して、
『い〜れて！』
と、この一言を言ってその中に入ることを苦手としてきたからだ。
　だが、組織に所属するためにはこのことが非常に重要なのだと
最近つくづく思う。

　組織の中で自分の居場所を見出すためには、
自分から積極的に周りの人間に働きかけなくてはいけない。
自分の存在を周りの人間に伝えること。
自分から積極的に話しかけていくこと。これはほんとに必要なこと、
重要なことなんだなと感じる。

　僕は、ニューヨークヤンキースの松井選手の大ファンです。
昨年の彼の活躍にはほんとうに感動しました。
そして、伝えられる彼の数々のエピソード。
その中で感動したものの一つが、移籍してすぐの彼の行動。
松井選手は積極的にチームの人たちとのコミュニケーションを
はかったという話。
　メジャーリーグという世界ではなおさらそういった姿勢が
大切なんだということを知りました。
そして、それはその他の世界でも、
組織という集団に所属するためには必要なんだと強く感じました。

　次に所属した組織ではそういった行動をとれるようにがんばろう。

　友達はいない。
それでも、別にかまわないって思っている。
そういうのってよくないんだろうな。
内向的。なんだな、僕の性格は。
どうもネガティブなんだ。いつからこんなんなんだろう。

　昔からこうだ。
幼稚園の時から。
みんなが遊んでいる輪の中に、
「い〜れて！」
この一言がいえない。
　でも、がんばって少し言えるようになった時期もあった。
でも、基本的には言えない。

　いつしかこの一言が自分の中で不要なものになっているような
期がしてきた。
輪の中に特に入りたいという気持ちにならない。
だから、言う必要なない。
「い〜れて！」と。

　小学校に上がってからも同じだ。
新しいクラスになったとき、
僕はクラスの友達に対して自分から口を開いたことがない。
いつも誰かから話しかけられるのを待っていた。

　中学校は地元の公立中学だったので、半分以上が小学校の時の
メンバーだった。だから、ほとんど知っている人たちばかりだったから、
そんな経験はあまり気にはならなかった。
　だが、今よく考えてみるとやはり、初対面の相手に対して
自分から話かけた記憶は少ない。

　それに、この頃から僕は自分という人格に目覚めていたと思う。

　僕は、自分に対して正直にいようと思った。
楽しくもないのに笑ったりしないようにしようと。
つまらないのに、楽しいふりをしないようにしようと。

　僕はそう決めてしまった。

ただ自分の思うことをどこかに書きたいと思ったんだ。
だったら、ノートにでも書けばいいし、
メモ帳でも開いてＰＣに保存してもよかった。
誰かに読んでもらえることを期待したから。

なにか文章を書きたいという気持ちは強くて。

今まで自分が歩んできた経歴を書こうと思う。

19歳　1997年　4月　某理系大学入学
24歳　2002年　3月　某理系大学卒業
24歳　2002年　4月　某情報系の会社にSEとして入社
25歳　2003年　3月　退社

　大学を卒業するのに5年もかかってしまった。
同じことを何度も繰り返してしまった。
同じ過ちを。
同じ失敗を。
それが過ちであること、それが失敗であることに気づいたのは
つい最近のことだ。

15歳　1993年　4月　都立Ｍ高校入学
18歳　1996年　3月　都立Ｍ高校卒業

　都立Ｍ高校に入学したところまではまあまあ、
特に問題はなかったと思う。
失敗とか過ちとかは。
問題は入ってからだ。

　特に古典の授業ではノートをとるものだとは思いもしなかった。
古典の先生の授業は面白くないし、、、
何を言っているのかさっぱりだった。
それは僕の頭が足りなかったせいか、
先生の話を聞こうとしなかったせいか、
そもそも、古典に興味がなかったせいか。
もちろん、古典なんてできなくたってなんの問題も、
生きていくうえでなんの問題もなかったと思うが。

　そんな風にして僕は授業中ゲームボーイをやったり、漫画を読んだり、
睡眠をとったり、そんな風にして高校3年を過ごした。

　現代文、古典、社会、生物、地学、英語、その他、、やる気が起きなかった。
唯一、数学だけは授業を聞く気になっていた。
でも、それも2年までかな。3年の時には全ての授業に対して、
ほとんど興味を示さなかったと思う。

　高校をなめきっていた。
都立高校だったのでよっぽどのことでもない限り留年などありえないと
たかをくくっていたし、事実そうだった。

　当然のように浪人の道を選んだ。

　僕は勉強が嫌いだったのか？！

　だったら、なぜ浪人したんだ。すぐに働けばよかったじゃないか。