放蕩騎士の徒然語り。

　今日、支店長殿に呼び出されてな。今月一杯で（つまり明日で）傭兵の契約を打ち切るとのことだ。
　さて！！かくてまた無位無官の身となったわけだが、これからどうしたものか……。
　私に何が出来る？
　先日、２０も半ばを過ぎてしまったこの身に。

　誕生日であった。かくてまたおめおめと生き恥を晒し、２６となってしまった自らへの慰めとして、いつもより２００ほど高いバーボン「オールドクロウ」を買う。
心の沸き立つ事が無くなって久しい。


我が心を癒すは火酒と音曲、書物に孤独。あとはいくばくかの悪趣味だ。


　なに、恋愛だと？
　私はサークル在籍中数え切れない程女性陣からの愚痴を聞いた。其の殆どは付き合っている男性陣に対するものであった。そして確信したのだ、恋愛とは揉め事の父親だと。そして私自身が斯様な事に向いてないと。

　そうか……嫌われているのだな私は……。職場の面子にベテランの御方々は苦笑する程度ですんでいる。
　ああ　またあいつが　へまをしたか。まあいつもの事だな　と。
　
　ところが……私より後に入った三人は私のことを随分と苦々しく思っている御様子。
　
　まっこと申し訳ない。すまぬな、一向に上達せぬで、すまぬな、貴公等より長いのに仕事が遅くて。
　しかし、喜んでくれ。きっとおそらく近いうちに私は放り出されるだろう。勤務態度だけは善くしていた故、温情をかけてもらっていたが、そろそろ社の方も限界だろう。



　まったく！！真面目な無能など不真面目な問題児よりよっぽどタチが悪い！！



無論！私のことだとも！！！はははははっはははははははｈ

　家族親戚から、よく「結婚はしないの？彼女とかはおらんの？」と聞かれることに閉口する。
　ああまったく！！苛付かせる！！！！

　女友達は何人もいる。みな大事な友だ。
　なかには二人ほど、かって惚れた女性もいる。
　それゆえ「家族」などというやりにくい存在に落としたくは無い。


　家族は苦手だ。家族と食事をしていて、味のわかったためしがない。
　一人にこもる場所があるからこそ、人間関係はうまくいくのだ。
　

　結婚せぬが失策とでもいうような視線で私を見るな。

　友人がいる　職がある　五体がある　法に触れておらぬ

　なにも問題などないではないか。

いまのこの状態をなんとしたものか……。テンションが上がらぬ……欲求が出てこない……。
漫画を読んでみる…………何も感じぬ。
小説を読んでみる…………文字を追っているだけだ。
秘本・色事本の類を読んでみる……何も感じない。
酒を飲む　カフェイン剤を飲む　音楽を聴く　外を歩く　奇書悪書を開く　歴史書を開く　メタルを聴く　アクセを身に付ける　服を着替える。



なんだれは　なんだこれは　なんだこれは　なんだこれは　なんだこれは　なんだこれは



気晴らしが　刺激が　遊興が……………。私の手から

　さて、家族から「片手間でとれる資格ではなく、もっと大物を一点狙いしてみては？」との指摘をうけた。…………残念ながら大物を狙うには仕事の終わってからスクールなどに通わなければならぬでな。非常にやりにくい。
　さらには…………『この分野に行こう』という展望も無い。なれば、一つ（全く興味が無くとも）大物を採って……。
　
　
　
　よく考えてみれば、私は昔から『この職種に行きたい』と思っては『こんなに大変なのか？では止めよう』と考えてきた。ああ、ああ、なんと無為な人生か。



　これでも昔は考古学者になりたかったのさ。

　グラビアアイドルの小向美奈子嬢が微量の覚醒剤を所持して捕まったというニュースが見えた。
　さて小向嬢、私は貴女をしらぬ。あなたの活動も知らぬ。（グラビアには詳しくないのだ）
　貴女が彼の薬を使っていたのなら、それは忌むべき事だ。早う罪を祓い、薬と縁を切り、出て参られ。
　貴女が使ってはなく持っていただけなら、貴女は賢明だ。さほどの拘束期間にはならぬだろうから、さらりと出て参られい。
　そして……この件が冤罪で貴女が無関係なら、なんとしても身の潔白を証明なされませ。
　此の世の人間の大部分は人の醜聞が好きであったり、人を攻撃するが好きな悪党である。さような輩の思うつぼにならぬよう。
　


　そして……まだ本人が認めていないにも関わらず魔神の首でもとったように騒ぐマスコミ御方々に申し上げる！斯様な情報は公開せずとも良い。公開したところで醜い中傷を生むが関の山だ。なれば左様な事は司法機関だけが知っておればよい。『知る権利』にも程度という物がある。

　私の仕事は電力会社向け地図の調査員だ。大体調査する電柱の数にもよるが、一日に１００あたりを消化する。手慣れた人間は（私もそろそろ手慣れなければならぬが）１５０あたりを消化するが私は１００弱に留まっている。
　それでも１００を維持していれば良かったのだが、世の中はそう帳面通りにはいかぬもの、生憎の雨で、殆ど進まなかった、スケジュールの関係上、明日はのこり１１０程を片付けなければならぬ。……問題は……明日も雨だということだ。

　少々見栄えは悪いが、ビニールを引っ被ってそこで書くとするか。

　偏頭痛が酷い…………。会社の車が空気が悪すぎる（煙草の臭、泥の臭、同僚が喰った安菓子の臭などを混ぜ合わせた悪臭の樽）が故か、風邪でもひいたか、精神的なものか、判らぬがとりあえず鎮痛剤を飲んでおくとする。

　そして私の目は相変わらず悪く、動く物をみるのが辛い。

　さて、景気が悪くなるとどこからともなくお節介な御大尽方が「こうやって成功せよ」と記した本が溢れてくる。とりあえず昨日みた本は「受け身を捨て、苛烈な征服者たれ。周りと同じ奴隷になるな。王であれ！」といったような事を書いておったな……。
　いやな、確かに貴殿等のような者達からしてみれば「将来の展望無く無為に仕事をする者達」は見てて我慢がならぬのかもしれぬが……、我々は我々でまっとうに仕事をしておるのだから……放っておいてくれぬか。
　我等は誠実な弱き民だ。支配するならどうぞご随意に、だが淘汰するのはよして頂きたい。




　ところで……この手の書物によく書かれている「恋人や伴侶も作れぬ度量では成功できぬ」という理屈……これは言い過ぎではないかな？発破をかけるにしてもやりすぎだ。これではせっかく貴殿の書物を読んでやる気を出した者がいてもすっかり気落ちしてしまうのでは？そこらへんをよくお考えあそばせ。お節介な選帝候殿。