放蕩騎士の徒然語り。

　おお！おお！
　こまった事に、仕官の求人が、介護か警備員しかない。工場もあるが技能をもって居ない。
　しかしどちらも体力勝負……。
　
　できるのか？私に
　じじさま　ばばさまの相手が
　できるのか？私に
　体力勝負の警備員が

　とまれ一月まではこの仕事が続く。
　途中で放り出すなど無責任は出来ぬからな。
まずはこの仕事を完遂せねば。

　こう……バイトでも契約社員でもそうだが、仕官していて増えるものがある。

　酒だ。そしてカフェイン剤だ。


　大量のカフェイン剤、これがなくては仕事の気力がわかぬ。
　酒、これがなくては悲しみが取れぬ。

　酒房への侮辱だという事はわかっている。
　
　だが……私には無理だ。

　家族が苦手だ。話をするのが辛い。
　あんなに真面目な両親なのに　全く完全に苦手だ。

　そして　普段　友人一同に　人当たりのいい言葉を吐いておきながら
　酒と薬品でしか　自らを動かせぬ　自分が嫌いだ。

　法の砦には優秀な官吏や法官達が大勢勤めている。
　彼等が忙しく働く【広間】を抜けて、【書庫】へと到ると、其処には【書庫の走り】達がいる。
　彼等は皆、近隣の食い詰め者で、野草の花弁ほどの小さな報酬に釣られて集められた。彼等の財布には【未来】も【銀貨】も【希望】も持っておらず、また仕事に対する熱意も酷く少ない。
　食い詰めた女官
　外で働かざるを得なくなった母親
　偏屈な学士崩れ。
　放蕩騎士の成れの果て


　彼等の剣は【怠惰】に錆付き
　鎧は【諦め】の悪魔に喰われ
　盾は奇妙なニヒリズムに腐り落ちた


　今日も書庫には溜息が木霊する。

　弟よ、そなたはこう言ったな。
【え？豚肉嫌いって言ったから牛肉使ったんだけど】と
　
　ああそうとも、私は豚肉が苦手だ。
　プロが料理したものでなければ　触りたくも無い。
　だが……牛肉が好き　と何時言った？
　アレも同じだ。

　腕がないと　自分で言うなら　ポークステーキなどという面倒くさい料理に手を出すな！！

　焼くときにバター入れすぎて　油塗れのステーキ
　
　身がズタズタの魚料理……


一番腹が立つのは
　私が　作っていたときの　三倍の値段がかかっていることだ。
　

　なんとか首尾よく仕事を見つけることが出来た。
　一月半ばまで法務局での仕事がある。

　仕事内容は、資料をスキャニングして　問題点を書き出して　チェックして……
　よくある資料整理だ。


　ほう？法務局が外注したのか、この仕事。発注先は……【キリスト教奉仕団】？

　おやおや、我等は書類仕事の十字軍か。
　神の命ずる仕事は残業は無いが、時給が低いらしい。

　しかも　この雇われ十字軍、メンバーが全員素人だぞ。食い詰めパートと食い詰めフリーターだ。しかも指揮官殿はほかの事務所との併用？

　しかし横の同僚殿、仕事が遅いのはお互い様だから　何も言わぬがメモぐらいは取らぬか？メモもとらずに【わかりませんでした】は無かろう、指揮官殿少しお怒りのようだったぞ？